瞑想をいくらやっても変わらない部分を変えるパワフルなワーク



シャドウ・ワーク(影の統合のための3-2-1プロセス)の紹介

■何気ない日常の中で繰り返されている人間関係のパターンと感情のパターン


あなたには、誰か憧れる人で、
「ああなりたいなあ」「今の自分はまだまだだけど」と思うような人がいますか?


あなたには、誰か嫌いな人で、
「ああはなりたくない」「自分はそうじゃないけど」と思うような人がいますか?


まあ誰にでも、そういう憧れの対象となる人、嫌いなタイプの人、というのはいると思います。


そういう何気ない日常の中で繰り返されている人間関係の単純な「好き・嫌い」が、
ストレスとなることもあれば、肥やしとなることもあります。


肥やしになる面の例を言えば、

  憧れる人を目指してがんばることで、自分をさらに磨いていくこともできるし、
  嫌いな人を反面教師として、自分自信を振り返って磨いていくこともできます。


逆に、ストレスとなる面を言えば、

  憧れる人が凄すぎて、自分に自信をなくしてしまったり、いつまでもその人のレベルにまで至れなかったり
  嫌いなタイプの人にあまりにも翻弄されて、平常心を保てない、些細なことが気になって仕方ない

なんてこともあります。


そして、普段何気なく繰り返されている「人間関係のパターン」「感情のパターン」もあるかもしれません。


例えば・・・

  車の運転中に、他の車にいつもイライラしてしまう
  苦手なタイプの人がいて、生きにくい
  不安症・恐怖症・神経質などの傾向がある
  いつも、同じタイプの人を好きになったり、憧れたりするが、その人に近づけない


などなど。。。


簡単に言い換えれば、

  「他人の言動によって自分の感情が振り回される状態」

です。


人として生きていると、多かれ少なかれ、こういった経験はするものでしょう。


■瞑想を続けても解決できない問題がある、という問題


インサイトCDを使った瞑想を始められた方の中には、


  そういった人間関係のストレスから解放されたい、とか、
  些細なことが気になる神経質な自分を変えてもっとリラックスしていられるようになりたい、とか、
  傷つきやすい部分を癒してもっと自信と平常心を保てるようになりたい、


などと思って始められた方も多いことと思います。


確かに、インサイトCDは、脳をバランスの取れた深いリラックス状態に導きますので、
ストレスから解放されて、平常心を保ちやすくなるよう助けてくれます。


しかし。。。。


瞑想などのスピリチュアルな実践にかかわったことがある人なら誰でも経験しうることなんですが、
実は、瞑想を長年続けているのにもかかわらず、家族や職場、友人などとの人間関係の中で、
何の変化も得られないで、いつものパターンを繰り返して何の成長もない、ということがありえます。


瞑想を続けているのにもかかわらず、結局いつもと同じような考え方や行動を繰り返してしまって、
人間関係のストレスが解消されることなく、自分自身も人間的に成長することもなく、
ずるずると時間だけが過ぎていく。。。


どんなに長く深く瞑想の実践をしていようとも、
特定の家族や知人との関係の中では、自動的・無意識的にいつものパターンが繰り返されてしまう、
ということがありえるのです。


インサイトCDを使った瞑想を続けている場合、このようなことが起こりにくい特長があるのですが、
それでもある理由によって、効果・変化を実感しにくくなってしまう場合があります。


■なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか?


主な理由は、人間的な成長・変容というものが、
とてもゆっくりしか進まず、なかなか得がたいものである、ということと、
そして何より、瞑想というシステムには、決定的な弱点があるからです。


では、その瞑想の決定的な弱点とは何でしょうか?
その説明に興味のある方は、このまま順番に読み進めていってください。


また、その瞑想の弱点を補うにはどうしたらいいのでしょうか?
今すぐ、その方法を知りたい方は、シャドウ・ワーク(影の統合のための3-2-1プロセス)このページ下方を早速やってみて、
あとで時間のある時に、飛ばした部分を読まれると理解が深まるでしょう。


■瞑想では何をするのか?その特長


ますは、その【瞑想の弱点】を理解しやすくするために、
まず瞑想では何をするか、瞑想にはどんな特長があるか、について確認しておきましょう。


通常、瞑想においては、すべてを観察し、自分から切り離していく作業をします。
これを「脱・同一化(Dis-identification/ディス-アイデンティフィケーション」と言います。


(この説明を難しいと感じる方は、「瞑想は単に頭を空っぽにしてリラックスすること」
 くらいに捉えておいても構いません。できるだけ分かりやすく説明しますので、ついてきてくださいね。)


例えば、

  「私は怒っている」

と言う時、「私」=「怒り」という具合に同一化している状態と言えます。


瞑想では、


 「私は怒りを感じているが、私は怒りそのものではない」


といった具合に「私は○○を感じているが、○○ではない」と認識していきます。
(これが「脱・同一化」ということです)


例えば、怒りであれば、怒りを感じている時、その怒りに浸りきるのではなく、
その怒りという感情を、「観察している平静な自分」に気づきます。


そして「意識に上っているもの全て」を「観察の対象物」として認識し、
「脱・同一化」していきます(=「私は○○を感じているが、○○ではない」)。


その「観察する」「脱・同一化する」という行為を続けることで、「観察者でいられる自分」を強化して、
結果、何ものにも動じない境地を深めていくのが瞑想の重要な目的の一つです。


(最終的には、「観察者の自分が存在する以前の自分は誰か?」というところまでいきますが、
 ここではこれ以上入り込まないことにします)


しかし、その「観察する行為」「脱・同一化する行為」が、瞑想の決定的な弱点を生み出し得ます。


■瞑想というシステムの決定的な弱点と「影」「切り離された自己」


その弱点とは何かといいますと、
その観察されている対象(感情や経験)を本当は自分自身も持っている、もしくは持つ可能性があるのにもかかわらず、
自分にはそんなものはない、自分はそんな感情/経験を持ちたくない、と自分自身から切り離されてしまうことがある、という弱点です。


そのように、自分自身から切り離されたり、
「自分にはない」「自分ではない」とみなされてしまった側面を、
「影(Shadow/シャドウ)」もしくは、
「切り離された自己(Disowned Self/ディスオウンド・セルフ)」
と呼びます。


「影」「切り離された自己」が形成されると、日常では例えば次のようなことが起こりえます。


  ・自分を不快な気持ちにさせる人がいて、気分を害することがある
  (例:ゆっくりしている人を、のろまでどんくさい人だ、と思いイライラするなど)

  ・車の運転中に、他の車にいつもイライラしてしまう
  ・苦手なタイプの人がいて、生きにくい
  ・不安症・恐怖症・神経質などの傾向がある
  ・いつも、同じタイプの人を好きになったり、憧れたりするが、その人に近づけない

  ・悪夢・嫌な夢・理解しがたい夢を見る


全ては、「影」「切り離された自己」のなせるわざ、と言えます。


(良いと感じるものであれ、悪いと感じるものであれ、
 どちらも「影」「切り離された自己」となりえる可能性を秘めています。)


■「影」「切り離された自己」が「他人に投影」されていく


「何だか話が長くなって難しいし、飽きてきた」という方は、
シャドウ・ワーク(影の統合のための3-2-1プロセス)このページ下方を早速実践してみてください。


ここからはまだ余裕のある方のために(笑)、
そうなっていくプロセスと弊害をもう少し具体的に、順を追ってみていきましょう。


感情や経験というのは、そもそも最初の段階では、


  「私は怒っている」
  「私はあの人がねたましい」
  「私は魅力的で価値のある人間だ」


といった具合に、「私は〜」という「1人称意識」として意識に上ります。


しかし、理由は何であれ、そういった経験・感情などが、脅威となり、良くないものと判断されると、
それを自分の意識の外側に押し出して
往々にして他人のもの、他人/外側から来ているものとみなしてしまうことがあります。
(常に必ずそうなる、というわけではありませんが)


これを【投影(Projection/プロジェクション)】といいます。


このような【投影】が起こるきっかけの例を挙げてみましょう。


【怒り】や【ねたみ】の場合、
まず、怒っていたり、人をねたむ行動をとった自分が、嫌われたり叱られたりした結果、
それを良くないもの・脅威・不快だと感じるようになります。


例えば、幼児が何かの理由で、母親に対して【怒り】を感じたとします。
兄弟に対する【ねたみ】でもいいでしょう。

しかし、幼児が【怒り】や【ねたみ】を表現することで、
他人(母親や兄弟)からの愛情など何か大切なものを失う可能性を感じる場合、
【怒り】や【ねたみ】をよくないもの、感じたくないものとして【抑圧】して、
自由に表現しなくなってしまいます。


その【怒り】や【ねたみ】を感じることがその幼児にとって【脅威=愛情を失う】となるので、
「そんな感情は自分の中にはないということにしたい」という気持ちが無意識の内に働きます。

しかし、【怒り】や【ねたみ】は自然な感情ですので引き続き自分の内側から湧き上がってきます。

では、どうするか?


その結果、母親や兄弟に対する【怒り】や【ねたみ】を直接感じることはないように【ある種の工夫】をして、
その代わりに【偽の感情】とも言える【恐怖】や【悲しみ】などの感情を経験するようになります。

【怒り】や【ねたみ】を感じて表現することは、その幼児にとって【脅威】となりえますが、
【恐怖】や【悲しみ】を感じて表現しても、母親や兄弟との関係に【脅威】となりにくいからです。


そんな時、人はそれらの感情を「これは自分ではなく、他人が怒っている、ねたんでいるんだ」と捉え、
自分自身は【怒り】や【ねたみ】とは関係がない、と捉えるようになります。


これを【投影】といいます。


そして、その結果、「怒り」や「ねたみ」を感じている他人に対して、
制御しがたい感情的な反応(例えば、許せない、怖い、などの感情反応)をしてしまうようになります。


また、【魅力】や【価値】の場合、
他人と比べられて、自分には【魅力】や【価値】がない、と考えるようになった結果、
そうした特性が、自分にはなく、他人の中にしかない、という気持ちが無意識の内に働きます。


そして、【魅力】や【価値】が、
自己から切り離され、他人の中にしか発見できなくなるような【投影】が起こりえます。


そして、【魅力】や【価値】があるように見える人に対して、
制御しがたい感情的な反応(例えば、自己卑下、強い憧れ)をしてしまうようになります。


また、信念や価値観も「影」「切り離された自己」を形成させる可能性があります。


例えば、

  「何事も早くきびきびと行うべきだ」


などと言った信念・価値観を持っている場合になどには、ゆっくりしている人を見ると、


 「何やってるんだ!のろまでどんくさいやつだな」、などとイライラするかもしれません。


この場合、「ゆっくりと行動する」という部分に、不快・脅威を感じて、
「これは自分にはない」と自己から切り離され、自分や他人の中に発見された時(投影)に、
制御しがたい感情的な反応(過剰な自己規律や、他人へのイライラ)をしてしまうようになります。


■「影」「切り離された自己」の弊害


このように、感情や経験を不快・脅威として感じるようになると、
それを自分で経験しないようにするために、投影が起こるわけですが、
そうすることで、どんな弊害があるのでしょうか?


まず、相手の人をありのまま見つめ、認めることができなくなります。
そして、自分自身の感情・経験をありのまま見つめ、認めることができなくなります。


そして、「影」「切り離された自己」となった感情/経験の持っているエネルギーが使えなくなります。


例えば、「怒り」
未熟な段階では、自己中心性の表現でしかないかもしれませんが、一番強いエネルギーなので、
生命力・元気・活力や、意欲、正義感、正当な自己防衛、自己主張・自己実現などにつながりうるエネルギーです。


「ゆっくりした行動」は、
生産性の低さ、頭の回転の悪さ、身体能力の衰えとみなされるかもしれませんが、
こころの穏やかさや、気楽さ、落ち着き、正確な判断などにつながりうるエネルギーです。


「ねたみ」は、
未熟な段階では、相手を貶め、自分は成長しない、というような卑屈なものかもしれませんが、
自分の未熟さに気づく、自分より優れたものを発見しそれに近づく、というエネルギーになりうる可能性を秘めています。


このように、本来有益に使える側面も備えた感情/経験なのにもかかわらず、
それを全て丸ごと、自分の外側に投影してしまうことになるので、そのエネルギーにアクセスできなくなってしまいます。


それは、自分の可能性を狭め、生きにくくしているのと同じです。


それに加えて、
実は「影」「切り離された自己」を自分の外側に押し出す無意識的作業(=投影)そのものが、
精神的・神経的エネルギーを消耗させます。


例えばごく簡単な例ですが、
「怒ってはいけない」「ねたんではいけない」「常にテキパキ動かなければいけない」
と思い続けていたら、エネルギーを消耗しますよね。


■「投影」「自己からの切り離し」と瞑想の関係


そこで、この「投影」「自己からの切り離し」と瞑想の関係なんですが、
瞑想をしていると、そういう「投影」「自己からの切り離し」が無意識の内に起こりやすくなってしまうのです。
なぜなら、瞑想が指示することが「私は○○を感じているが、○○ではない」と「脱・同一化」していくことだからです。


それは、瞑想の厳密な指示に従わないような、
ただ「何も考えずポカンとしてリラックスする」ようなタイプの「気軽な瞑想」であっても同様です。


■「投影」「自己からの切り離し」と「真の感情解放」「感情を手放すこと」の違い


ただもし、「私は○○を感じている」と、その所有をちゃんと認めて、しっかり経験した上で手放すのであれば、
それは自分にとってもはや脅威ではないので、自分から切り離してしまう必要もなく、他人に投影されることもありません。


例えば、嫌な事をされ続けたら、怒りの感情を抑えず、「それはやめてください」ということをしっかり伝える。


無理にポジティブシンキングをしようとして却ってうまくいかなくなった時には、
「別にいいじゃん、うまくいかない時もあるし、落ち込んだっていいよね」と思えるようになる。


上記は例の一部でしかありませんが、
そのように自分の感情/経験をちゃんと受け入れた上で手放していれば、
怒っている人に接しても、人をねたんでいる人に接しても、魅力的な人に接しても、自分で何か失敗をしても、
その言動や結果に振り回されることもありません。


平静でいられるし、自分にできることは何か?という建設的なことにエネルギーが使えます。
(そうなれるような具体的な方法論を後半でご紹介しています)


しかし、ほとんどの場合、「自己からの切り離し」は無意識の内に行われます。
なぜなら、上記で説明した通り、何かしらの脅威・不快感を感じて、
自分のものとして経験したくない感情/経験であるからです。


■「影」「切り離された自己」に気づき、真に感情解放されるには人間関係が必須


そして、
「自己からの切り離し」は無意識・無自覚の内に行われるからこそ、
一人で瞑想していたり、リラックスしているだけでは、
その「影」「切り離された自己」に気がつくことが、ほぼ不可能でして、
他人との関係の中でしか、それに気がつくことができないのです。

(これは非常に重要な点です)


そして、
その誰しもが人間関係の中で自動的・必然的に気づかされることになる「影」「切り離された自己」は、
「瞑想で何も考えずにリラックスして無の境地に入ること」で解決することはできません。

(これも非常に重要な点です)


言い方を変えれば、瞑想の弱点を補い、より本当の感情的解放と自由を経験するためには、
人間関係のストレスは、とても有益なリソース(資源)であり、利用しない手はない、
と言えるほどの宝の山である、とも言えます。


これからは人間関係でのストレスを悪いもの、避けたいものと思わず、宝の山と思われることをお勧めします。
なぜなら、人間関係でのストレスを解放するための具体的な方法論があるからです。


その方法を実践することで、
よりエネルギーが増し、精神的な自由と不動心が育っていくのが分かるでしょう。


■「自己からの切り離し」「投影」の最初の段階 それに気づく目安


もう少し理論的な説明が続きますので、さっさと実践的なワークを行いたい方は、
シャドウ・ワーク(影の統合のための3-2-1プロセス)(このページ下方)へ飛んで、
後で暇がある時に読んでもかまいません。


「自己からの切り離し」「投影」の最初の段階では、

  「それは『あなた』であって『私』ではない」という形をとります。

例えば、

  「あなたが怒っている」      「私が怒っているのではない」
  「あなたが嫉妬深い」       「私がねたんでいるのではない」
  「あたなは魅力的で価値ある人だ」 「私が魅力的で価値ある人なのではない」

といった具合です。


「私は〜」という「1人称」が「あなたが〜」という「2人称」に置き換えられるわけです。


その「自己からの切り離し」や「他人への投影」が起こっているかどうかを知る目安としては、


  なぜか、その人を煩わしく感じる。
  なぜか、その人に惹かれる。
  なぜか、その人に自分の思考を費やしてしまう。
  なぜか、その人に感情的な影響を受けてしまう。(良きにつけ、悪しきにつけ)
  なぜか、その人に対して、ノンストップに不平不満を言い続ける自分を発見する。
  なぜか、その人と対等かそれ以上の自分に成長できないでいる。


というような時には、それが起こっていると考えられます。


この場合、厳密に言うと、

 1)過去や現在の自分の経験/感情が、自分から切り離され、他人に投影される場合と、
 2)まだ自分が獲得/経験していない経験/感情が、自分から遠ざけられ、近づかないでいる場合があります。

そのどちらも「影」「切り離された自己」と言えます。


■「自己からの切り離し」「投影」の最終段階 それに気づく目安


そしてもしさらに、その感情/経験/状況から感じる脅威が大きくなって、
意識から完全に排除したくなるほどまでになると、


それは「私」や「あなた」という「人」ではなく、
得体の知れない「それが〜」という3人称にまで追いやられます。


この段階では、例えば、誰(何)によって、なぜそのように感じるのか分からないまま、


  イライラ、過剰反応、恐れ、恐怖症、激怒、何かを避けたい感じ、何かに惹かれる感じ、
  悪夢・不快な身体症状


などといった経験がなされます。


順を追って振り返ってみると、


  1人称(私は○○です。○○を感じています。)
 →2人称(あなたが○○です。あなたが○○を感じています。私ではありません。)
 →3人称(得体の知れない「それ」が私に○○を経験させています。私でもあなたでもありません。)


といった具合に、
本来の自分自身の感情/経験が、どんどん自分から遠いところに追いやられていくのが分かると思います。


■「自己からの切り離し」「投影」が起こっているときには瞑想は役に立たないだけでなく・・・


このように、本来自分の経験・感情が、自己から切り離され、他人や得体の知れない何かに、投影されている時には、
ほとんどのタイプの瞑想が役に立ちません。


というより実際、ことを悪化させてしまいます。


そういった時にまず必要なことは、
自分自身から切り離された感情や経験を、自分自身のものとして取り返すことなんですが、
瞑想の伝統においては、さらに切り離すことを勧めてしまうのです。


その結果、「投影」や「自己からの切り離し」が起こったままとなるため、依然として、


  「他人の言動によって自分が振り回され続ける状態」
  「自分の感情がコントロールできない状態」


が繰り返されてしまいます。


瞑想では、
「全ての経験を観察する『意識』はあらゆる経験から自由であり、独立しているものであると覚知すること」
という指示をしますが、
これは、自分自身から切り離してしまっている経験(=「影」)に対しては全く功を奏しません。


健康的な「脱・同一化」もしくは「観察」というのは、自分自身から切り離してしまった経験や特性を、
一旦、再び自分自身のものとし(Re-own)、再びつながり(Re-associate)、再び同一化する(Re-identification)ことによってのみ可能となります。


■「影」「切り離された自己」を再統合することのメリット


本来自分のものであることを忘れていた「影」「切り離された自己」と再びつながり、そのエネルギーを取り返すと、
より自由にいろんな人格・感情を経験し/手放すことができるようになります。


その結果、こころの平穏が増し、自由に使えるエネルギーも増えます。


一般的な観察をするタイプの瞑想は、
その「影(Shadow/シャドウ)」となってしまっている側面に気づいたり、
それを自分自身に再統合したりする作業を含まないので、


次に紹介する「シャドウ・ワーク(影の統合ための3-2-1プロセス)」は、
瞑想の弱点を補い、より「自由に完全に機能できる人間」となっていくために必須のワーク(作業)となります。


その効果を理屈ではなく、実際に経験をしていってもらいたいと思います。



***

■シャドウ・ワーク(影の統合のための3-2-1プロセス)


このワークでは、自分の「影」「切り離された自己」を再所有・再統合するプロセスを行います。


  まず、自分の「影」に向き合います(Face It)。

  次に、自分の「影」と話をします(Talk to It)。

  そして、最後に自分の「影」になります(Be It)。


「向き合い」「話をし」「それになる」。。。とてもシンプルです。


もう少し詳しくやり方を説明していきましょう。


1.まず、関係の中に何かしらの感情的反応を感じる人を選びます。


例えば、恋人、家族、親戚、同僚、上司、などです。
片思いの相手でもいいですし、車の運転中に苛立たしく感じた他の運転者、などでもいいでしょう。


その人は、あなたを苛立たせたり、掻き乱したり、困らせたり、怒らせたりした人かもしれません。


もしくはその逆に、
その人にとても惹かれたり、夢中になってその人のことばかり考えてしまっていたり、
その人を独り占めしたいような気持ちであるかもしれません。


良い感情でも、悪い感情でもどちらでも構わないので、強い感情を感じる誰かを選びます。
初めてやる場合には、誰か「人」を選んだほうがやりやすいでしょう。


2.向き合う(Face It)


その人(それ)を想像したら、
その人(それ)の、嫌な面、もしくは惹かれる面を3人称で描写します。


  「彼は・・・」「彼女は・・・」「あの人は・・・」「それは・・・」
  「あいつは・・・」「そいつは・・・」「やつは・・・」「その方は・・・」
  「その状況は・・・」「その症状は・・・」「その環境は・・・」


など、自分にとってしっくり来る表現を選びましょう。


この時のポイントは、
「その人(それ)は・・・」という表現で、その人(それ)の特長・性質・気になるところを描写することです。


もしくは、「私はその人(それ)が嫌いだ(もしくは好きだ)。なぜなら、その人(それ)は・・・だからだ。」
という形の方が出しやすいかもしれません。


それを声に出して言うか、書き出しましょう。(実際に書くことをお勧めします)


まずここでは、自分の内的経験を完全に出し切ることが目的ですので、
うまく表現しようとしたり、正しい言い方をしようなどと気負う必要はありません。
決してオブラートに包んだような易しい表現ではなく、ストレートに表現しましょう。


このワークを一人でやっている限り、
その本人や他の誰かに知られることはありませんから、包み隠さず全部表現しましょう。


・やり方がつかみにくい人のためのコツ


少し離れたところに、座布団か椅子を置いて、そこにその人(それ)がいるかのようにイメージしたり、
誰か他人に、その人(それ)について感じることを伝えている場面をイメージすると(例:あの人って、○○なんだよね)、
やりやすいかもしれません。


3.話をする(Talk to It)


その人(それ)と想像の中で会話をします。
この時、相手(それ)に対して「あなたは・・・」という表現で話します。


あたかもその人(それ)が、あなたの目の前にいるかのようにリアルに想像して、直接話しかけます。


その人(それ)に向かって、その人(それ)の何が自分を煩わせるのか、もしくは、
その人(それ)のどんなところに惹かれるのか、ストレートに伝えましょう。


簡単に言えば、2.向き合う(Face It)で書き出したものを、
「あなたは・・・」という表現で伝え、そこに自分の気持ちも加えて伝えます。
(初心者のうちは、書き出すのも効果的です)


「あなたは、・・・です。だから私は、あなたのことが嫌い(好き)です」
「あなたは、・・・です。だから私は、・・・と感じます」


といった具合です。


ここでも、うまく表現しようとしたり、正しい言い方をしようなどと気負う必要はありません。
決してオブラートに包んだような易しい表現ではなく、ストレートにどんどん表現しましょう。
(実際に相手は目の前にいません)


そして、相手に次のような質問もしてみましょう。


  「なぜあなたは、○○をしているのですか?」
  「なぜあなたは、私に○○をするのですか?」

  「あなたは、私に何を望んでいるのですか?」
  「あなたは、私から得たいもの、欲しいものがあるのですか?」

  「あなたは、私に何を見せようとしているのですか?」

  「あなたは、私に何かを教えようとしているのですか?」
  「あなたから、私が学ぶべきことは何ですか?」

  「あなたは、私にか言いたいことがあるのですか?」
  「あなたが、私に言いたいことを言って下さい」

  「あなたから、私へのギフト(贈り物/価値あるなにか/メッセージ)は何ですか?」
  「あなたの行動の肯定的な意図は何ですか?」

  「あなたは、どんな信念や価値観を持っていますか?」
  「あなたは、どんな立場・視点・考え方に基づいてその言動をとっているのですか?」


その人(それ)からの反応・返答を想像します。

思ってもみなかった反応があることに驚くかもしれません。


その人(それ)の反応・返答を、声に出して言ってみましょう。
そして、このやりとりを書き留めておきます。


・やり方がつかみにくい人のためのコツ


近くに座布団か椅子を置いて、
そこにその人(それ)がいるかのようにリアルにイメージして、話をしてみましょう。


慣れないうちは、相手の言葉を急いで言わずに、
内側から湧き上がってくるのをじっくり待った方がよいでしょう。


想像した相手のいる座布団か椅子に、実際に移動して、返答をして、また、元の位置に戻る、
という移動を何度か繰り返すのもお勧めできます。


・オプション

一通り、自分と相手の位置を往復したら、自分と相手との関係を客観的に見るために、
自分と相手の位置を距離をとって眺められるポジションに移動して(3角形の頂点の位置になります)
2人のやり取りを第3者的な立場から、振り返ってみると、気づきを得やすくなります。

その際、

  「私は、この人との関係から何が学べるだろう?」
  「私は、この人との関係をどうしたいだろう?」

と自問自答するのもよいでしょう。


4.その人(それ)になる(Be It)


その人(それ)になりきりましょう。
あなたが困惑させられたり、惹きつけられているその人・その性質そのものになります。


向き合う(Face It)の場面で表現・記述した特長を、「私は・・・です」といった具合に声に出して、
その人(それ)そのものになります。


慣れないうちは、混乱したり、よく分からなくなってしまいがちですので、
向き合う(Face It)の時に、3人称で書き留めておいたものを見ながら、
「私は・・・です」と置き換えていくのがよいと思います。


例えば、次のように言うことになります(あくまでも例です)。


  「私はのろまです」

  「私は怒っています」

  「私は人のことを考えていません」

  「私はかっこよくてやさしい人気者です」


とても変な感じがするでしょうが、変に感じるのが普通です。


ここで成りきっている特長・感情・性質は、
これまでずっと自分にはない/もしくは得られない、と否認してきていた、あなた自身の特長・感情・性質の一部です。


5.プロセスを完了させる


これらの「切り離されていた人格/感情/特性/経験」が自分の中に存在している/もしくは存在し得ること、
を許容し、気づきましょう。


ここで重要なのは、まさにその人格/感情/特性/経験を自分の一部として「体感/経験」することです。
抽象的・概念的に「そういうこともあるかもしれない」などと片付けてしまわないようにすることです。


ただ「それ自体になりきってください(Just Be It)」


そうすることによって、一旦は切り離されていたその人格/感情/特性/経験を
再所有して、自分自身に再統合することができます。


そうすれば、あなたはもう自由です。
その人格/感情/特性/経験を持ち続けることも、手放すことも選べるようになります。


その性質を無理に好きになろうする必要はありません。


単にその存在を「そこにいてもいい」「そう感じてもいい」と許容することです。


その際の重要なコツは「深い呼吸をしながら行う」ということです。


・やり方がつかみにくい人のためのコツ


向き合う(Face It)と、話をする(Talk to It)のプロセスで、
座布団や椅子を置いて、そこにその人(それ)をイメージしましたが、
その人(それ)になる(Be It)のプロセスでは、その人(それ)をイメージしたその場所に実際に移動し、
「私は・・・です」
と言いながら、その人格/感情/特性/経験のエネルギーに同一化してみましょう。


・オプション

それに成りきった自分を距離をとって眺められるポジションに移動して(3角形の頂点の位置になります)
第3者的な立場から「なりきった自分」を観察してみると、
また新たな気づきを得られるかもしれません。


***

フォーカスCDを活用したコツ


まずフォーカスCDのDisk2の2トラック目(Envison/Brainstorm)を10分くらい聴いて、
そのままそのトラックをリピートさせながら、このワークを始めると、
よりイメージ内での会話がしやすくなり、気づきや統合がしやすくなるでしょうし、
ストレスを緩和しながら行えますので、お勧めできます。


初心者向けプログラム(週一回 15-30分)


週に1回、その週に会った一番インパクトのある人を対象にして、
向き合う(Face It)、話をする(Talk to It)、その人(それ)になる(Be It)
の各プロセスを、5-10分くらいかけて、全部で15-30分くらいやってみましょう。


その際、紙とペンを用意し実際に書きながらやってみましょう。


座布団か椅子(もしくは、何か目印になるもの)を用意して、
そこにその人(それ)をイメージするとやりやすいことがありますので、
必要に応じて、試してみてください。


もっと慣れてきたら(毎朝・毎晩 数分ずつ)


慣れてきたら、全てのプロセスを、書き出すことなくこころの中だけで、
数分以内で完了することができるようになりますので、


影の統合のための3-2-1プロセスを、

  1)朝目覚めてすぐ、「夢」の中で一番気になった人やものと、
  2)夜寝る前に、その日一番気になった人やものに対してやってみましょう。


どちらの場合も対象は、煩わされる人でも、惹かれる人でもどちらでも構いません。


***

■焦らず、ゆっくり、じっくりと


それになる(Be It)時に、強い違和感や不快感を感じて、それになりきることが難しい時もあるでしょう。

それと話をする(Talk to It)時に、その人(それ)からうまくメッセージを得られない場合もあるでしょう。


また、このプロセスをやり通しても、その再所有した感情や特性をどうしてよいか分からず、
苛立たしく感じたり、途方にくれたりすることもあるかもしれません。


しかし、どうか焦らないでください。


結果を焦ってしまうと、せっかく意識に上って再統合され始めている「影」を
もう一度自分から切り離してしまうことになります。


説明した手続きの通りに、丁寧に行っていけば、必ず得るものがあります。
(うまくいっていない場合は、「影」に接触するのが不快なために、
 手続きどおりに丁寧やらないでいることがほとんどです。)


この影の統合ワークの主目的は、自分から切り離されていた部分とコンタクトを取り、
自分のものとして取り返すことです。


本来、どの存在の仕方・感情/経験にも良い悪いはありません。


どんな感情/経験も、良い悪いのラベルが貼られる前は、単に純粋なエネルギーであり、
本来のあなたにとって掛け替えのない大切な一部です。


ゆっくりとご自分のペースで、継続的に取り組んでいってみてください。


この影の統合ワークを、やりやすくしたり、効果を補足・拡充させるのに役立つ別のワークの
ご紹介も準備していますが、それらも、この影の統合ワークに丁寧に取り組んだ方にこそ、
効果的に働くものとなりますので、まずは、このワークをこの形式で実際に丁寧にやってみてくださいね。


***

ここで、最初にちょっとだけ触れた件について補足しておきます。


インサイトCDを使った瞑想の場合、インサイトCDを使わない瞑想に比べて、
瞑想の弱点のいくらかが自然に補われてしまうことがある、という点についてです。


インサイトCDを使って瞑想を行っていると、人によりますが、
人間関係でいろんなことに敏感になったり、不思議ととんでもなく嫌な人に出くわしてしまったり、
感情的な不快感が増したり、イライラしたり、夢をはっきり見るようになったり、
頭痛やだるさなどの身体症状が出ることがあります。


これはある意味、インサイトCDの刺激によって、「影」や「切り離された自己」が、
半強制的に意識の表面に出されてきている、と捉えることができるのです。


ですので、インサイトCDを使った瞑想を始めてから、
人間関係でいろんなことに敏感になったり、不快感・イライラ・夢・身体症状が出るようになったら、
それを「影の統合のための3-2-1プロセス」の対象にしてワークしてみてください。
(身体症状に関しては、必要に応じて医師の診察を受けることも躊躇しないでくださいね)


それに向き合って、3人称で特長を描写し(それは・・・です)、
それと、2人称で(あなたは・・・です。)と話、上述の質問をして会話をして、
最後に、それになりきって1人称で(私は・・・です)とそれを自分として経験します。


インサイトCDを使った瞑想は、

  1)瞑想本来の観察者のポジションや深いリラックスを促すと同時に、
  2)通常の瞑想では弱点となる、「影」「切り離された自己」との接触・再統合も

しやすい状態に導いてくれます。


別の言い方をすれば、インサイトCDを使った瞑想では、
頭の中が静かで眠ってしまうほどリラックスしていても、様々な考えや感情が湧き上がってきていても、
どのような経験をしていても、OKだ、ということです。


インサイトCDを聴き続けていると、
必要なプロセスが、必要な順番で、必要なだけ起こってきます。


しかし、
「影の統合のための3-2-1プロセス」を知っていると、
日常のあらゆる経験をきっかけにして、それを自分の成長につなげることがしやすくなります。


と言うのも、
通常インサイトCDを使って瞑想していると、脳がバランスの取れた深いリラックス状態に入るため、
様々なストレスが自然に解放されてしまうことがあるのですが、それでも、
「影」「切り離された自己」との接触に抵抗し続けていると、
インサイトCDを聴き続けていても、日常のストレスが減らないということがありえるからです。


きっかけとなりえるのは、

  人間関係のストレス、神経質さ、こだわり、好き嫌い(何かを避けたい感じ、何かに惹かれる感じ)
  イライラ、何かへの過剰反応、恐れ、恐怖症、激怒、強い憧れ、悪夢、不快な身体症状

などなど日常にあふれていると思います。


是非とも、インサイトCDの瞑想とあわせて、
まずは今日から週に1回、「影の統合のための3-2-1プロセス」を始められることをお勧めします。


インサイトCDの瞑想と「影の統合のための3-2-1プロセス」は、セットで行うことで、
その両方の効果が増すようになっています。


***


ちなみに、このシャドウ・ワークが、3-2-1プロセスと呼ばれる理由ですが、
無意識的で不健康な「脱・同一化/分離」が、次のように1人称-2人称-3人称と進みますので、

  1人称(私は○○です。○○を感じています。)
 →2人称(あなたが○○です。あなたが○○を感じています。)
 →3人称(得体の知れない「それ」が私に○○を経験させています。)

その逆を行い、経験を再統合します。

人称を3人称-2人称-1人称と遡るため、3-2-1プロセスと呼ばれています。


***


参考文献

実践インテグラル・ライフ―自己成長の設計図

英語教材 Integral Life Practice Starter Kit (統合的人生/生活の実践のためのスタートキット)より
Integral Life Practice Starter Kit

参考サイト 英語サイト Integral Life.com (インテグラル・ライフ)より
Practice: The 3-2-1 Shadow Process
Hot On The Shadow's Trail

著作権者の許可を得て、上記教材・サイトの情報の翻訳に、加筆・修正をしてご紹介しています。


2010年01月13日 11:27